Stokesian Dynamics のレビュー記事から(2)

更新: 2011-02-19 に文章を修正。

2001年の物性研究に掲載された市來さんのレビュー

Twitter市來健吾さんに質問をして、その回答を頂いた事への反応で、前のエントリーの続きです。(新たに書く時は別エントリーの方が追記をしていくよりもいいのかな?)

.@ryseto さんへの返事1)やばい、早速、切り返された、しかも『レビューの英語版を予定されている』ってプレッシャー付きだ(^^;)

プレッシャーなんて(^^)、楽しみにしています!!

『ここでの res 形式は、粒子 1 の速度を各粒子に働く力の線形結合で表現するという意味ですよね?これは「粒子間の力を重ね合わせて」ですか?』の「粒子 1 の速度を」が、ちょっと分からないです。

書いている時に勘違いしてしまいました。resistance 形式はある粒子へ働く力を、自分や他の粒子の速度について重ね合わせる事でしたね。

ここは、ぼくのイメージしているものと、書いたことばにギャップがあるかも。ぼくの頭はlubを想定してて(自己部分は除いてあって)粒子1の力へのlubの寄与は、1−2間のlub+1−3間のlub+…と、重ね合わせになってる、かな。

行列表現でも、主要項がどうやって構成されるのかというイメージを持つ事が大切なのですね。私の中では重ね合わせるイメージが、自らの速度だけが主要項な
F_1 = - R U_1+C_{2}U_2+C_{3}U_3+\cdots
でした。(ここでは粒子 1 が受ける力を F_1 と書いています。
2 体力は、2 粒子間の相対速度に依存する lubrication 力を重ね合わせていくということなんですね。
F_1 = F_{11} + F_{12} + F_{13} + \cdots = - R U_1 - C_{12}(U_1-U_2) - C_{13}(U_1-U_3)+\cdots
という見方が欠落していました。
接近している2粒子の相対速度が大きい時ほど強い2体力が働きます。
「高濃度」ではこの2粒子間の相対速度からの寄与が大きく、この展開形式が「よい結果を与える」という事なのですね。

速度場の多重極展開では、Stokes 方程式の線形性を根拠に、各粒子の表面が流体に及ぼす力を重ね合わせる事で、ある場所の速度が他の粒子やそこにある粒子にどのように乱されるかを表現するのですね。(これは抽象的で、Stokes抵抗やlubrication力のような具体的なイメージが掴み難いですね。高濃度での破綻は、lubrication力という変化が速くなる所を扱えない事以外に、流体場の方程式が線形だとしても、粒子の存在によって流体場が穴だらけになり、単純な重ね合わせで書けないのではと思っています → そうすると、高濃度での多体効果が本当にうまく取り込めているのかという疑問が生じますね。[その方向での研究が進行中です...])

『コロイド凝集体のように粒子間の相対速度が小さく粒子が接近している場合はどうでしょうか?』ぼくは、ここは面白いポイントだと思っている。原因と結果があって、相対速度を小さくしている原因は、動かないようにホールドする力があるはずだと。

Bossis(1991) に、force-free な凝集した粒子と、接触している粒子が cohesive に結合した rigid な凝集体の2つを比較していますよね。SD の面白さはやはり前者なんですよね。Wagner&Brady(2009) も、Shear thickening の原因をこの lubrication 力によって一度密な部分が形成されると固まりは早い変形に対して抵抗するという話ですね。
ただ、私が気にしているのは後者です。極端な場合として、完全に rigid に結合した凝集体の場合、どの粒子間の相対速度も 0 です。imposed flow が無い時はもちろん力がゼロでちゃんと正解ですが、imposed flow がある時にある粒子にかかる力は、流れが各粒子にどのように disturb されるかを重ね合わせて見積もる必要があります。(大きい凝集体に対して2体厳密解を使う時、imposed flow が粒子に邪魔されて凝集体の内部まで到達しない場合も、内部の2体に対して乱されていない imposed flow を含んだ2体厳密解を使うのでエラーが紛れ込みますね。)

『多体問題を res 形式で多重極展開するという試みでうまくいったケースはない』は、多重極展開はまず2体で考えるとして、res形式のそれって応力場を何らかのソースで展開するのかな。積分方程式の定式化で一重層と二重層って話はあるけど、よく分からない

一度、2体力の重ね合わせのイメージが掴めてからだと、変な質問だったと感じます。

のんびり日記に書いてる余裕がなかったので、ひたすらツイートにて断片的な返事でした。時間をおいてまとめたらいいかも。そうだ「古典的な論文の解説」の方にJeffrey-Onishiを入れておこう。あれはそれまでのまとめであり、骨のあるいい論文だ。

忙しい中ありがとうございました。市來さんにこうやって質問する機会があり嬉しいです。